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考古 寄贈コレクション
國學院大學博物館の収蔵品は、調査研究の過程で得られた学術標本をはじめ、寄贈・購入・模造資料や、関連する歴史資料などから構成されている。とりわけ、全国各地の研究者や、篤志家の方々から寄せられた寄贈資料は、当館収蔵資料の一角を支える貴重な学術的財産と言えよう。その内、まとまった資料に関しては、寄贈者の意図を受け継いだ研究を進めると共に、その御厚意を顕彰する個人コレクションとして保存している。
樋口清之コレクション当館の収蔵資料は、創立者である樋口清之博士が昭和3(1928)年に寄贈した約4,000点の考古資料から始まった。初期の資料は、出身地である奈良県の採集品が圧倒的多数を占めており、東京・千葉・埼玉をはじめとする関東地方のほか、中国東北部にて得られた遺物も比較的多い。國學院大學を退職するまで旧考古学資料館の館長を務めた樋口博士は、随時必要な資料を購入して寄贈するなど、当館を生み育ててきたのである。
野口義麿コレクション野口義麿氏は、國學院大學専門部、慶應義塾大学を卒業後、東京国立博物館の学芸部考古課先史室長等を歴任。当館には、北海道から沖縄県にかけての膨大な考古資料を寄贈された。その主体は、縄文時代に属するものであり、前期の神奈川県十三菩提遺跡や、晩期の青森県亀ヶ岡遺跡出土遺物など、学史的に名高い資料が含まれている。とりわけ、縄文時代後期の千葉県余山貝塚出土の出土遺物は、極めて資料的価値が高い。
椛島隆コレクション椛島隆氏は、幼少の頃から考古学に関心を抱き、世田谷中学校在学時に樋口清之博士の薫陶を受けた。それ以来、都内の中学校で教鞭を執る傍ら、神奈川県・東京都近在の遺跡を50年に亙って入念に踏査して膨大な資料を蒐集。また、行政的な発掘調査が実施されないまま破壊されつつあった遺跡に赴き、入念に遺物を拾い集めたという。寄贈コレクションは、完形土器21点を含み、土器片70箱、石器類4,000点を優に越えている。
小野良弘コレクション小野良弘氏は、國學院大學法学部に学びつつ、考古学に関心を抱いて樋口清之博士に師事。卒業後は、千葉県の遺跡踏査に情熱を傾け、特に先史時代の攻玉遺跡について熱心に研究された。コレクションのうち、佐倉市神楽場遺跡・印西市天神台遺跡などから出土した縄文時代晩期における翡翠の攻玉関係資料は、その製作工程を明らかにできる第一級の遺物である。氏の意志によって当館へ寄贈された遺物は、実に13,000点に上る。
徳富蘇峰・萬熊・武雄コレクション徳富コレクションは、明治から昭和にかけての言論人である徳富蘇峰氏と、二男萬熊氏、四男武雄氏の親子二代に亙って蒐集された資料であり、彼らの文化人・教養人としての一面を伝えている。朝鮮出土資料は、蘇峰氏が京城日報赴任時代に採集したものであろう。各地の国分寺瓦や板碑は、萬熊氏の手によるものといわれる。また、関東地方における縄文・弥生時代の考古資料は、総じて武雄氏の蒐集によるものと推定される。
上川名昭コレクション上川名昭氏は、茨城師範学校(現茨城大学教育学部)を卒業した後、國學院大學・同大学院を経て、日本大学第三高等学校や、玉川大学等で教鞭をとりながら考古学の研究に携わり、自ら生田古代学研究会などを設立した。特に、縄文時代の遺跡を中心に調査し、その研究に取り組んだという。当館には、茨城県大洗吹上貝塚、東京都日野吹上遺跡、神奈川県上石田遺跡をはじめ、東日本各地の遺跡から出土した多数の遺物が寄贈された。
吉谷昭彦コレクション吉谷昭彦博士は、京都大学大学院理学研究科を修了後、鳥取大学教授に就任。水源開発・環境問題の研究を進める傍ら、微量元素組成の分析による黒曜岩の産地同定研究に取り組み、退官後に同大学名誉教授となった。国内外の約200ヶ所で採集した黒曜石コレクションは、日本列島で確認された原産地のほぼ全てをカバーしている。博士から贈られた標本は、国内屈指の網羅的な資料であり、高い学術的価値を有するものといえよう。
服部和彦コレクション服部和彦氏は、早稲田大学専門部商科を卒業して、陸軍少尉に任官。戦後のシベリア抑留を経て帰国した後は、静岡県で薬品会社を経営しつつ、東京国立博物館の石田茂作博士に師事して仏教美術を学んだ。当館には、約2,000点もの仏教美術・神道美術・考古資料を寄贈され、特に約900点に及ぶ和鏡は、わが国屈指のコレクションとなっている。また、鎌倉時代から室町時代にかけての金銅仏、懸仏類にも多数の優品が含まれる。
竹岡俊樹コレクション竹岡俊樹博士は、明治大学・東京教育大学大学院・筑波大学大学院を経て、パリ第6大学にて博士号を取得。共立女子大学等で教鞭を執り、石器の緻密な観察に基づく型式学的研究法を前提として、日本列島の旧石器時代と、人類史の研究に取り組んできた。香川県国府台遺跡にて採集された石器コレクションは、瀬戸内技法によって作られたサヌカイト製石器の製作技術と、石器組成に関する研究を進める上で極めて重要な資料である。